扇 貴博
Takahiro Ougi 株式会社スタンダード・プロ 代表取締役美容業界のより良い発展に寄与する。
メーカーとお客様をつなぐ企業として、
チャレンジし続けます。
警察官を目指すも商社マンになり、お客様が求めている商品を調達する楽しさを知った扇貴博は、転職した美容機器メーカーで業界に必要な業種、改善点に気づき会社を設立。信用第一の企業姿勢が認められていることは、顧客のリピート率の高さからも伺える。
美容業界に新しい風を吹き込んでいる、彼が見つめる先にある夢とは。
Profile
1973年、長崎県生まれ。高校卒業後、飲食店、商社、美容機器メーカー勤務を経て、2017年、現専務の村岡と共に、株式会社スタンダード・プロを立ち上げる。1LDKのマンションの一室で、脱毛器1台からスタートし、4年で800アイテムを扱うまでに成長。
現在は、化粧品開発、美容機器の開発および販売、不動産や銀行融資の相談など、クライアントのニーズと期待に応えるべく、あらゆる業種とタッグを組み、スピードと精度、そして楽しみをもってさまざまなチャレンジをしている。
転職を繰り返した20代
株式会社スタンダード・プロは、美容業界のイメージアップと市場規模の拡大、より良い労働環境づくりに貢献するべく活動しています。この事業に至るには、僕のそれまでの経験が大きく関わっています。
小さい頃から、警察官になるよう親に叩き込まれていたこともあって、高校卒業後に公務員試験を受け、警視庁と京都府警に合格しました。一旦、都会への憧れから福岡に出て、その後、当時の恋人と同じ長崎県警を受け直して合格したものの、警察学校に入学する直前に振られてしまい、警察官になる道は諦めました。19歳のときのことです。
親にはいろいろ言われましたが、違う道に進みたくて、福岡で居酒屋の店長やバーテンダーなど、飲食業界のさまざまな職種に就きました。23歳の頃、親から結婚を考えるように言われたこともあって昼間の仕事に就きましたが、なかなか馴染めず、20代は転職を繰り返しました。
30代に入り、ハローワークで紹介された、半導体関連の機器を扱う商社に入社します。勤めていた6年ほどの間には、広島や大分など国内のあちこちに赴任しました。辞めたきっかけは、タイの駐在員に選ばれたことです。当時のタイは政治情勢が不安定だったので辞退したのですが、会社での居心地が悪くなってしまいました。
リーマンショック後だったこともあり、なかなか次の仕事が見つからず半年間無職。景気が悪いとは言え、トップクラスの成績だった自分の営業力に自信があったので、2、3か月経つ頃には流石に不安になりました。そして、ようやく見つかったのが、今の仕事につながる美容機器メーカーです。
商社スタイルを美容業界に
1台約60万円の痩身機器を月に6台ほど売り、入社してから3年間ずっと売り上げナンバーワンでした。僕は、「どうも、こんにちは。こんな機械があるんです。買いませんか?」と、大抵の営業マンとは違う営業スタイルで飛び込みをするので、「面白い」と受け入れてくれるエステティックサロンが多かったです。
取引先に対して、法令関連手続きのサポートをしたり、欲しい情報を集めたり、販売以外のサービスもしていました。お客様からは、「商品の良さよりも、扇さんから買えたことが良かった」という嬉しい言葉をもらい、自分がやりたいことは、お客様に寄り添い、必要なサポートをすることだと思いました。
僕は商社時代の、自分がセレクトしたさまざまな商品を提案することに魅力を感じていて、メーカーでは扱っている商品しか紹介できないことにジレンマがありました。また、美容業界に入り、見積書や契約書など約束事において曖昧な部分が多いこと、商社のように、必要なものを調達する業種がないことに気づきました。そこで、この業界に商社の機能を持ってくれば、必然的に信用と売り上げが上がるのではないかと考えました。そして、43歳のとき、会社を立ち上げました。
経験を生かした営業と業態
商社とメーカーでの経験から、自分の会社では「お客様が欲しい商品を揃える」「美容以外の相談事も受ける」、営業は信用がポイントとなる「紹介のみで行う」と決めました。
美容業界では珍しい「ショールーム」を設け、お客様が欲しい商品を揃えています。便利になった現代は、日用品や家電製品、洋服から食品までクリック1つで購入できますが、個人的な買い物と違ってエステティックサロンの場合、オーナー自身が実際に商品を見て良し悪しを判断しなければ、サロンのお客様に満足を提供することはできないと考えています。
ですから、ショールームでは良い商品を見つけられるように、美容機器も化粧品も一つ一つ手に取って試していただくことができ、1点から購入が可能です。1種類の脱毛器から始め、美容関連の展示会でメーカーさんと直接交渉して一つ一つ商品を増やしていき、現在は800のアイテムがショールームに並んでいます。メーカーとの交渉のポイントは「九州の営業マン」。東京や大阪でしか展開していないところに対し、「スタンダード・プロは、デパートのようにいろいろな商品を集めて、お客様に紹介します。御社の営業マンとして九州で宣伝します」と話し開拓し、今、80のメーカーさんと取引しています。販売先となるエステティックサロンは、北海道から沖縄まで全国に渡り約800あり、そのほとんどがリピートしてくださっています。
機器に故障・不具合があったときは当社が窓口となり、面倒な手続きをお客様に代わって行います。メーカーは良い製品を作る、僕たちはその製品を見極め、お客様の声をメーカーにフィードバックして改善につなげる。そうやって、より良いものを市場に提案することが、スタンダード・プロが考える「美容業界の活性化」につながると思っています。
「美容以外の相談事」は、チラシ作成、不動産情報、税務相談といったことで、それらを全面的にバックアップするサポート体制を整えています。そのほかに、サロンのサービス・売り上げ向上のための各種セミナーや、サロンスタッフ向けの技術講習も実施しています。
オリジナル機器の開発 HYDRO VENUS
当社には、オリジナルのピーリングマシーンもあります。美容機器メーカーに勤めていたときに知り合った、韓国・ソウルにあるメーカーの社長から、「一緒に機械をつくりませんか」と誘われ、資金力がついてきたところで開発を始めました。それが『ハイドロヴィーナス』です。
それまでのエステティックというのは主に、肌に美容成分を与えるだけのものでした。しかし僕は、土台をきれいにせずに美容成分を与えるのは、根本的に違うのではないか、まずは肌そのものをきれいにすることによって、もっと肌が輝くのではないかと考えました。
ピーリングは、肌表面の古くなった角質を除去するので、多少ダメージを与えます。そのためハイドロヴィーナスは、ピーリング剤と同時に美容液も導入し、肌を健康な状態に保つ仕組みになっていて、施術後の肌のヒリヒリ感がありません。オリジナルのピーリング剤は、化粧品メーカーさんと約1年かけて共同開発しました。原料にケミカルなものは一切使っておらず、リンゴ酸を主成分に、植物由来のものでつくられています。
ハイドロヴィーナスでピーリングした後は、毛穴が引き締まってハリが生まれ、肌表面のごわつき感がなくなり、化粧ノリが良くなります。その効果を、1回の施術で実感いただけるのも特長です。
社名に込めた意味
「スタンダード・プロ」という社名には、2つの意味があります。僕の中では、すでに美容に携わっている方がプロ、これから始めようという方がスタンダードという位置づけで、1つは、その両方、全てのお客様に良い商品をという意味。もう一つは、美容における判断基準となる「安全」と「品質」のスタンダード、「標準になる会社」という意味。加えて、「お客様に代わって、たくさんある商品の中から良いものを選びます」というコンセプトも込められています。
商品を選ぶ際は、機械の性能・効果はもちろん、そのメーカーの組織体制やアフターフォロー体制、働いている社員の声、経営者の経歴といったことも含めて判断しています。社員の方には直接お話を伺って、データには表れない部分も大切にしています。また、医療・美容機器を審査する福岡県庁の薬務課にリサーチに行き、医薬品医療機器等法の遵守にも努めています。
夢は、「スタンダード・プロの認定マークが貼られているものは安心して使える」というシステムをつくること、そして、ハワイに支店を出すことです。ハワイはやはり、経営者にとってステータスの一つですよね。まだ漠然としていますが、日本の技術を海外に輸出する拠点として、いつか叶えたいと思っています。